SIerで数年働いたあと、転職しました。
「やめたい」と思うようになった理由は一つではありません。働き方、給与、人間関係、そしてキャリアの見通し。いくつもの要因が重なって、最終的に転職を決めました。
リーダーなど責任のある作業を担当することが多く、その割に給与が少ないと感じた人も少なくないのではないでしょうか。私もそのうちの一人です。
ただ、SIerにいたことがすべて無駄だったとは思っていません。SIerだからこそ得られた経験も、確かにありました。
この記事では、私がSIerをやめたいと思った理由を正直に書きます。そのうえで、SIerにいて良かったと感じている点、そして「やめる」以外の選択肢はなかったのかについても整理します。
同じようにSIerで働いていて、辞めるべきか迷っている方の判断材料になればと思います。
理由①:プロジェクトを移れなかった
最も大きかったのがこれです。
私が所属していた部署は規模が小さく、抱えている案件が2つしかありませんでした。
そのうちの1つに配属され、そこから動けない状態が続きました。理由を聞くと、将来的にそのプロジェクトのリーダーにしたいという意向があったようです。
評価されていること自体はありがたい話です。ただ、裏を返せば**「この先も同じ現場にいることが前提」**ということでもあります。
案件の選択肢が限られることの意味
SIerに限らず、所属企業が抱える案件数は、そのままエンジニアのキャリアの選択肢の幅になります。
案件が2つしかなければ、経験できる技術領域も、業界も、開発スタイルも、その範囲に限られます。自分がどれだけ意欲的でも、環境が変わらなければ経験も変わりません。
私は他部署への異動を相談しましたが、フロントエンドの開発経験しかなく、「他部署に移ってもフロントエンドの開発しかないじゃん」と即却下されました。
これは個人の努力ではどうにもならない部分です。
理由②:下流工程から抜け出せなかった
私の担当はフロントエンドの下流工程が中心でした。
上流工程はリーダーが担当しており、私が関わる機会はほとんどありませんでした。4年目という年次を考えれば、スキル的にまだ任される段階ではなかった、という面もあると思います。
ただ問題は、このままいても上流に関わる機会が訪れる見通しが立たなかったことです。
下流工程に留まるリスク
転職活動をして痛感したのですが、**書類選考で見られるのは「何を経験してきたか」**です。
私の場合、フロントエンドの下流工程の経験しかなかったため、応募先の求めるスキルセットと合わず、書類で落ちるケースが続きました。
同じ現場で同じ工程を続けていると、その環境では問題なくても、市場に出たときに評価されにくい状態になります。これに気づけるのは、たいてい転職活動を始めてからです。
このあたりの経緯は、別の記事に詳しく書いています。
理由③:働き方に納得できなかった
前職は基本的にフル出社が前提でした。
エンジニアという職種は、業務内容からすればリモートワークが可能なはずです。実際に一時期リモートで働いた期間もあり、問題なく業務は回っていました。
それでも出社が前提とされる環境に、将来を考えたときに納得できませんでした。
働き方は長期的な生活に直結する
通勤時間は、1日あたりで見れば往復2時間程度です。しかしこれが毎日、何年も積み重なると、相当な時間になります。
その2時間を自己学習や家族との時間に充てられるかどうかは、キャリア全体で見ると小さくない差になります。
理由④:現場の進め方に納得できなかった
これは個別の環境の話なので一般化はできませんが、同じような状況の方もいると思うので書いておきます。
私がいた現場では、協力会社のエンジニアの力量にばらつきがあり、その分の負荷が特定の人に集中する構造になっていました。
成果物の品質に問題があれば、結局どこかで誰かが対応することになります。その「誰か」が固定化されると、負荷も固定化されます。
さらに、顧客から指摘を受けた際に、その不満が現場内の立場の弱い側に向かう場面もありました。
これは構造の問題でもある
協力会社のエンジニアに対して、受け入れ側が十分な育成をできないという話は、以前別の記事でも書きました。立場によって扱いが変わりやすいのは、契約構造上そうなりやすい面があります。
ただ、構造の問題だからといって、その現場にいる個人のストレスがなくなるわけではありません。改善の見込みがないと感じたとき、環境を変えるという選択肢が出てきます。
理由⑤:給与が見合っていなかった
率直に言って、給与水準に納得できていませんでした。
業務の負荷と報酬が釣り合っていないと感じる状態が続くと、モチベーションは確実に下がります。
ただ、ここで一つ正直に書いておくべきことがあります。私は転職するまで、自分の市場価値を知りませんでした。
「安い」と感じてはいましたが、では自分の経験で妥当な金額はいくらなのか、という基準を持っていませんでした。これは転職活動で痛い目を見ることになります。
それでもSIerで良かったこと
ここまで「やめたい」と思った理由を書いてきましたが、SIerにいたからこそ得られたものもあります。
リーダー経験を積ませてもらえた
これが最も大きい財産です。
私は前職でリーダーの役割を経験させてもらいました。チームをどう動かすか、課題をどう整理するか、関係者とどう調整するかといった経験は、技術スキルとは別の資産になります。
なぜこれがSIerだからこそなのか
ここは契約形態の話になります。
SES(準委任契約)では、クライアント企業に指揮命令権がありません。業務の指示は所属企業の責任者を通す必要があります。
この構造上、常駐するエンジニアが現場のリーダーとして他社のメンバーに指示を出す立場になるのは難しいのです。実態として指揮命令に近いことをすれば、偽装請負の問題にもつながります。
結果として、SESで常駐する場合はメンバーとしての役割に留まりやすく、リーダーなどの重要な役割はプロパー社員が担うことになります。
私はプロパー社員だったからこそ、リーダーを任せてもらえました。これは転職活動でも評価された経験です。
実際、面談ではリーダー経験を深掘りされた
転職後、SESとして案件面談を受ける中で気づいたことがあります。コーディングスキルより、リーダー経験について深く聞かれることが多かったのです。
もし前職でリーダーを経験していなければ、面談での評価は違っていたと思います。
この話は別の記事に詳しく書いています。
SIerに残る選択肢はなかったのか
正直に考えてみました。
技術的には、もっとリーダーとしての経験を積みたかったという気持ちはあります。その点だけを見れば、残る価値はあったかもしれません。
ただ、育成の質は結局のところ誰がどう育てるかに左右されます。制度があっても、現場の方針や上司の考え方次第で、得られる経験は変わります。
私の場合、所属していたプロジェクトで働き続ける限り、状況が改善する見込みはないと判断しました。だから、残る選択肢はなかったと思っています。
判断の基準
「やめたい」と思ったとき、考えるべきは次の2点だと思います。
| 問い | 判断の方向性 |
|---|---|
| 不満の原因は、環境を変えれば解消するか | 部署異動や配属変更で解決するなら、転職は急がなくてよい |
| その環境が変わる見込みはあるか | 見込みがないなら、動くことを検討する |
私の場合は、部署内に案件が2つしかなく、移動もできない状況でした。つまり社内で環境を変える手段がなかった。だから転職という判断になりました。
逆に言えば、社内で異動の選択肢がある人は、まずそれを試す価値があると思います。転職にはコストもリスクもあるからです。
やめる前に知っておきたかったこと
最後に、転職してから気づいたことを書いておきます。
自分の市場価値を把握しておくべきだった
「やめたい」と思ってから転職活動を始めるまで、私は自分の市場価値を知りませんでした。
その結果、エージェントから希望年収を下げる提案を受けたとき、それが妥当なのか判断できませんでした。知識がなければ、交渉もできません。
やめたいと思っている段階で、まず自分の経歴が市場でどう評価されるかを知っておく。これだけで、転職活動の進め方は変わります。
年収以外の条件も確認しておくべきだった
転職先を決めるとき、どうしても提示年収に目が行きます。しかし実際の待遇は、賞与の有無、退職金制度、各種手当まで含めた総体で決まります。
私はここで失敗しました。詳しくは別記事に書いています。
まとめ
SIerをやめたいと思った理由を5つ挙げました。
- プロジェクトを移れなかった(案件数が限られていた)
- 下流工程から抜け出せる見通しがなかった
- 働き方(フル出社)に納得できなかった
- 現場の進め方に納得できなかった
- 給与が見合っていないと感じた
一方で、リーダー経験を積ませてもらえたことは、転職後に評価された大きな財産でした。契約形態の都合上、SESでは得にくい経験だったと思います。
SIerが一律に悪いわけではありません。重要なのは、今いる環境で自分が得たいものが得られるか、そしてその環境が変わる見込みがあるかです。
社内で異動できるなら、まずそれを検討する。それができないなら、外に出ることを考える。私の場合は後者でした。
私は転職して後悔はないが迷いはあるというのが本音です。しかし、その迷いを払拭するのは今後の自分の行動次第だと思っています。
あなたの決断も決して間違いではないはずです。あなたが考えて、勇気を持って決断したのだから。自分の輝けない環境にこだわるのではなく、自分の輝ける環境を探すのも大事なキャリアだと思います。